気まぐれ流れ星二次小説

パラレル・カービィ

(B面)

朝露にぬれた草原を、朝日が照らし始めた。
青いもやに沈む草に、色が与えられていく。

早朝の爽やかな空気の中、アスファルトを蹴る音が聞こえてきた。

タタタタタタタタッ

歯切れ良いスタッカート。
足音の主は世界最速のハリネズミ、ソニックである。

彼が走るのは、いつもは街とスタジアムを結ぶバスで混み合う道路だが、
今はまだ試合もない早朝なので、彼の他誰も走るものはない。

日課のランニングを続ける彼の耳に、誰かの話す声が聞こえてきた。

「…まったく、オマエが暴れるから変なとこに着いちゃったのサ。
いちいち穴開けるのもめんどーなんだぞ?」

両足でブレーキをかけ、立ち止まったソニックの目の前に、その声と共に奇妙なものが現れた。

赤と青の二股帽子を被った薄紫の一頭身。
黄色く、不釣り合いなほど長い腕のようなものは、どうやら翼として機能しているらしい。
六角形の光が、翼のあるところでいくつもきらめいている。

宙をゆっくりと飛び、こちらへ向かってくる二股帽子は、短い両足で誰かを抱え込んでいた。
懸命にもがき、二股帽子から逃げだそうとしている者の姿が目に入った次の瞬間、
ソニックは考える間もなく全速力で走り始めていた。

あっという間に距離をつめ、そして跳躍する。

「わッ…な、なんなのサ!?」

面食らった声を背に、ソニックは捕まっていたひとをしっかりと抱え、草原に着地した。
二股帽子がようやくソニックの姿を捉える。

「いきなり危ないじゃないのサ…って、ええっ?! オマエいつの間にカービィを…!」

チッチッチ。ソニックが指を振る。

「気づくのが遅すぎるぜ! ちびっこピエロくん!」

「ボクはピエロじゃないのサ! ちゃんとマルクって名前があるのサ!!」

小さな牙をむき出しにし、マルクはそう喚いた。

「あんまりカッカするとよくないぜ?
それより“ブラザーズ”に手を出した理由、聞かせてもらおうか?」

「……」

マルクは無言でソニックを睨みつけていた。と、突然けたたましく笑い出す。

「おーっほっほっほ! そんなのオマエに言うわけが―」

身を翻し、瞬時にソニックの後ろに回り込む。

「―ないのサ!」

口からカッターが放たれた。
空気までも切り裂かれるかのような鋭い音があがり、草がちぎれ、舞う。

しかし、そこにソニックの姿は無かった。
マルクの笑みが引きつる。

青い閃光。

マルクの体が横に吹き飛ぶ。

「っと、悪ぃ悪ぃ! ぶつかる気はなかったんだ」

ソニックがすました顔をして言った。遅れて彼が走った経路に沿って草がバサバサとなびく。
マルクは翼をはためかせて体勢を立て直した。

「…へぇ、少しはやるみたいだな」

――この際、カービィにちょっとくらいケガさせても構わないのサ。
生きてさえいればボクの計画は…

マルクは不吉な笑みを浮かべ、姿を消した。

静まりかえった草原に立ち、ソニックはマルクの姿を探す。
腕に抱えられたカービィもキョロキョロとあたりを見回す。

不意に彼が現れた。口いっぱいに何かを含んでいる。
ソニックが気づいて走り出すと同時に、マルクの口から大口径のビームが放たれた。
草が焦げ、吹き飛ばされる。

辛うじてビームから逃れたソニックは、まだビームを放っているマルクの下に走り込み、その顎を蹴り上げた。

「グッ…!」

マルクは目を白黒させていたが、そのまま上空に飛び上がっていく。
ビームの強烈な光でまだちかちかする目を凝らし、マルクの姿を目で追うソニック。

間もなく、空から小さな緑色の物が降ってきた。それらは特に何をすることもなく草原に潜り込んでいく。
いぶかしむソニック。
と、次の瞬間、地面があちこちで弾け、いばらの柱が伸び上がる。

ソニックの体はあっという間にいばらに絡め取られ、宙に浮く。

「おーっほっほっほ! 地に足がつかないんじゃオマエの俊足も意味無いのサ!」

太陽を背に、マルクが勝ち誇る。

「それはどうかな?」

ソニックは全く慌てていない。腕の中のカービィに「しっかりつかまってろよ!」と告げ、いばらの檻の中で体を丸める。

シュイイイイン!

いばらの檻がちぎれ飛び、中から青い回転球体が飛び出す。
球体は草原でワンバウンドし、ソニックの姿になった。
着地し、すぐに走ってマルクから遠ざかり始める。

「…! 待つのサッ!」

高度を保ち、マルクが追う。
上空から次々にいばらの種を落とすが、ソニックを捕らえることはできない。
瞬間移動を繰り返しても彼との距離は開いていく。

――なんとかしてアイツを足止めしなきゃ…。
! …そうだ!あの手があったのサ!

一方ソニックは前を向いたまま、抱えているカービィに話しかけていた。

「Hey、あいつとはどういう関係なんだ? なぜあんたを狙ってる?」

ところがカービィは、先程の高速回転でまだ目を回していた。

「…ぽぁぃゅ…」

小さな呟きがもれる。そのあまりに幼い声に、ソニックは初めてカービィをじっと見る。

「ん…?!」

記憶にあるカービィより体が小さい。

「カービィ…あいつに何されたんだ―」

「…! ぽよっ!」

ふいにカービィの視点が定まり、背後を見て声を上げた。
そのお陰でソニックは、背後に現れたマルクの攻撃をよけることが出来た。

黒い球体がうなりを上げ、斜め前に着弾する。
しかしほっとしたのもつかの間、着弾地点から凄まじい冷気が四方に広がり、
晩夏の草原をあっという間に氷の下に閉じこめてしまった。

ソニックは氷に足を取られ、転んでしまう。
とっさに背を丸めて倒れ、カービィを守る。

「カービィもろとも氷漬けにしてやるのサ!」

氷原の中、立ち上がろうともがくソニックに向け、マルクはそう言って口を膨らます。

再び黒い球体が放たれた。
その時、ソニックの腕からカービィが飛び出していった。

氷の上に立ち、足をばたばたさせて力をため、そして吸い込み始める。
カービィより大きいはずの黒い球体が、彼の口に収まった。カービィはそれを飲み込む。

「ば…ばかなっ! あれを吸い込めるわけが…」

驚くマルクの前に、光の中からアイスカービィが姿を現した。
氷の結晶を頭に戴き、体の色は水色になっている。

カービィは頬を膨らませ、その口から吐息と共に猛烈な吹雪をはき出した。
マルクの視界が白銀の雪に閉ざされていく。

「わあっ…前が見えないのサッ!」

慌てふためくマルク。
その間にカービィはソニックの手を引き、氷の上を走っていく。
アイスの能力のお陰で転ぶことはないようだ。

氷原の外に出たソニックはカービィを再び抱え、大急ぎで走り出した。
彼は、マルクを倒すことよりこの場を一旦離れ、城までたどり着くことを優先しようと考えていた。

道路には少しずつ車の姿が増えてきていた。
ソニックはその間をぬうようにして走り、城へと急ぐ。
「あれ、今のソニック?」というようないくつもの声を背に、ソニックは街の中へと入っていく。

途中、何人ものファンが彼を見つけ、足止めをし、サインをせがみ、握手を求めた。
いつもなら快くこたえるソニックだったが、今回ばかりはそんな余裕はなかった。
早口に詫びを言い、人々の間を駆け抜ける。

やっとのことで街を抜け、城にたどり着いた時には、もう他の皆は朝食を済ませ、試合を始めたところだった。
息を切らせ、ホールに駆け込んだソニックは、何事かと集まってきたファイター達に迎えられる。

「どこに行ってたんだい、ソニック? 朝ご飯温め直すかい?」

「あれっ、そのひともしかしてカービィさん?
でもおかしいな…さっきまでリビングで昼寝してたはずなのに」

ピットのその言葉に、ソニックは目を丸くした。

「本当か…?!」

黄色い星形のクッションに抱きつき、のんきに眠るピンクだま。
彼によく似た、一回り小さいピンクだまの方は、リュカが遊び相手になっている。

彼らの様子を眺めつつ、ソニック、ルイージ、ピットの3人はリビングの椅子に座り、話し合っていた。

「リンクとこどもリンクみたいなものなのかなぁ…」

ルイージの呟きに、ピットとソニックは訝しげな顔をする。
2人とも『DX』時代のファイターである、こどもリンクについては知らないのだ。

「ああ、そうだったね。…こどもリンクは昔ここでファイターをやってたんだけど、リンクの“子供時代”にあたる子なんだ」

「ええっとそれってつまり…ここには異なる時点の同じ人が同時に存在できる、ってことですか…?」

いまいち飲み込めない様子のピット。無理もないだろう。

「そうなんだ。ここでは他にもいろんなことが…。
…あ、起きたみたいだね」

彼にとって必要な睡眠を取り終わったのか、カービィはクッションから身を起こして、伸びをした。
果たしてソニックが助けた小さなカービィと、こちらのカービィはどういう関係にあるのか。
まずは本人に確かめてもらうことにしたのだった。

「わぁ~っ! そっくりだぁ! ぼくとそっくり!」

カービィは、小さなカービィが彼を見たときと同じ反応を示した。
まず驚き、そして嬉しそうに顔を輝かせる。

「なぁカービィ、そいつはあんたの“小さい頃”なのか?」

ソニックは、くるくると小さなカービィの周りを回って観察しているカービィに、呼びかける。

「え? う~ん…どうなのかなぁ?」

「小さいときに誘拐されたような記憶はありませんか?」

ピットが更に聞く。しかしカービィに思い当たりはないようだった。

「別人…ってこともありうるのかな…」

ルイージが考え込み、言った。

「せめておまえが喋れたらな。そうすればもう少しわかってくるんだろうけどな」

ソニックが小さなカービィの頭をなでる。小さなカービィはニコニコと笑い返した。

「あ、あの…それなら。僕…力になれるかも」

リュカが前に出た。彼にはネスと同じく、テレパシーとまではいかないものの、心の中に現れる相手の感情を読む力がある。

「こっちのカービィと関係してるものを見せて、反応を見てみるっていうのは…どうかな?」

5人は小さなカービィを連れて、まず地階のアイテム保管倉庫へと向かった。

「ワープスターにカレー、スターロッド…あ、これ忘れちゃだめだよね!」

カービィはそう言って、食物系アイテムの保存棚からマキシムトマトを取り出した。

「こいつにニックネーム付けた方が良いんじゃないか?」

小さなカービィを指し、ソニックが言う。

「確かに混乱するし…でもどんなのが良いかな」

「そうだなぁ…チビのカービィ…“チービィ”なんてどうだ?」

「そ、そんなチビだなんて、かわいそうですよ!」

ピットは慌てたが、“チービィ”本人は至極嬉しそうに

「チービィ? …チービィ、ぽよ!」

と繰り返した。

「ほら、こいつも気に入ったみたいだぜ?」

ソニックは得意げな顔をした。

カービィとリュカがアイテムを抱えて戻り、“チービィ”にそれらを順々に見せていった。
リュカがその目を注意深く見つめ、チービィの心の反応をうかがう。

その結果わかったことは、ワープスターに一番強い反応があり、その次にスターロッド。
カレーについてはどうも嫌な思い出があるらしい。
カービィの大好物、マキシムトマトには見覚えがないようだった。

「マキシムトマトを知らないなんて、やっぱりチービィは“ぼく”じゃないのかなぁ…」

そう言って、カービィはマキシムトマトを口に放り込んだ。

次に、カービィに関係するひと達に会わせることにした。
デデデはちょうど城にいたのですぐ来れる、とのことだったが、メタナイトの方は試合中で、返信がなかった。

「そういやおれもそろそろ試合なんだよな」

ソニックがケータイを開き、予定表を見る。

「僕も次の次です。
でもこの子を置いてくわけには…。元いたところを突き止めて帰してあげなきゃ」

「そのことについては大丈夫だよ。今、このことについてみんなに知らせた。
Mr.ゲーム&ウォッチが、チービィを守る担当の時刻表を作ってくれてるところだよ」

カービィによれば、チービィをさらおうとしていたマルクはかなりの策士で、
昔カービィをだまし、ポップスターを自分の物にしようとしたことがあるという。
(ちなみに、そのことについてカービィは全く根に持っていなかった。)
チービィをさらった目的はわからないが、彼はきっと、計画完遂のために執念深くここまで追ってくるだろう。

リビングにデデデが到着した。さっそくチービィと対面させる。

「これがちびっこカービィなのか?」

不思議そうに見るデデデに、チービィは嬉しそうに飛びついた。

「友達…なのかな。会えて嬉しいみたいです」

そこまで読み取ったリュカは、ふと首を傾げた。

「あれ…今カタツムリのようなひとのイメージが見えました。
いつもデデデさんの側にいるひとみたいですね…」

「わしの部下はワドルディだけだ。そんなやついないがなぁ」

チービィの頭をぽんぽんと優しくたたきつつ、デデデは言った。

しばらくしてメタナイトが試合から戻ってきた。
チービィの心を見たリュカは「あ!」と声を上げた。

「…さっきも見えた人だ…」

「さっき?」

ルイージが尋ねる。

「スターロッドやワープスターを見せたとき、金髪の女の子の姿が見えたんです。
チービィにとって大事な人のようでした。
…えっと、メタナイトさんに対しては、頼れる…うーん、先生みたいなイメージを持ってるみたいですね」

「私が先生か……似合わんな」

ファイター達に囲まれてはしゃいでいる“チービィ”を見て、仮面の騎士は苦笑いした。

ルイージの呼びかけに応え、ファイター達の多くが試合の合間をぬってリビングに集まり、チービィの面倒を交代で見はじめた。
遊び相手は主に子供ファイターで、監視役は少なくとも2人いるようになっている。

“チービィ”は天真爛漫で、どのファイターにも人見知りすることなくじゃれついた。
特にカービィと仲が良く、彼が非番の時はいつもくっついて歩いていた。
カービィも弟ができたように思ったのか、“兄”としてはりきり、自分のおやつを分けてあげたり、一緒に昼寝したりしている。

昼時の厨房に2人でこっそり忍び込んで、昼ご飯を半分ばかり盗み食いしたときは
ルイージ達におこられてしまったものの、それ以外に大きなハプニングは起こらなかった。

昼下がり、サムスとゼルダという心強い大人のファイターがいることもあって、チービィを城の外、中庭で遊ばせていた。

子供達は鬼ごっこをして遊んでいる。
今はデデデが鬼をやっているようだ。チービィやピカチュウ、アイスクライマー達を追いかけている。

「うわはははは! 捕まえてやるぞ~!」

どうにも貫禄のない鬼である。

「彼は平行世界パラレルワールドから来たのかもしれないな」

サムスはソニック達の話を人づてに聞き、自分なりに考えていた。

「平行世界…といえば、マリオさんとドクターさんもそうでしたね」

噴水のそばのベンチに座るゼルダが言った。サムスが頷く。

「マリオが医者になった世界とならなかった世界。
…チービィがカービィに関する人・物に違う反応を見せたことを考えると、
彼がカービィの幼い頃だと安易に結論づけることはできない」

「そしてあのマルクという方、ソニックさんのお話では、ここに来たのは予想外だったようですが…。
一体何のために彼を誘拐したのでしょうね?」

そう言ってゼルダはチービィを見た。
刈り込まれた芝生の上を、歓声をあげて走り回っている。
鬼に追われてというよりは、皆が走っているので面白がって走っているようだ。

その様子にサムスはふと表情を和らげた。
しかし、視界のはじに映るものに気がつく。

「噂をすれば影…か」

城門前に、赤青帽子のマルクが立っていた。翼はしまっているのか、見えない。
門番のザコ敵が立ちふさがる。
いくらファイターの知り合いといえども、害なす存在と認識されれば通してはくれないのだ。

ザコ敵の隙間から、中庭で遊ぶチービィの姿を見て取ったマルクは、
ただニヤッと笑っただけで、城から去っていった。

「何か手があるのかもしれないな」

マルクが見えなくなり、サムスはようやく右腕を下ろす。
策士マルク。子供のような顔に浮かべたおよそ似つかわしくない歪んだ笑みが、2人の印象に残っていた。

夕方は一日の中で最も試合がたてこむ時間帯だ。
ファイターの入れ替わりも激しくなり、チービィの面倒見役も頻繁に変わる。

「また試合が終わったら戻ってくるからな。良い子にしているのだぞ」

クッパがそうチービィに言い聞かせていると、後ろで誰かが吹き出した。

「むっ!マリオか…」

一瞬バツの悪い顔をしたものの、

「ケガなどさせたらゆるさんからな!」

と言ってドスドスと足早にリビングを出て行った。

「あ、マリオさん!」「おかえりなさぁ~い」

リュカとカービィがマリオを出迎える。

「よっ! チービィの様子はどうだ?」

「元気ですよ。さっきおやつを食べたところです。
それにしても…クッパさんって意外と小さい子に慣れてるんですね…驚いちゃったな」

「ま、あれでも“パパ”だしな。でもあんまり本人の前でそれ言うなよ? ムキになるから」

マリオはそう言ってちょっとリュカをおどかし、チービィを抱え上げた。

「元気してたかぁ、チビ助ー?」

「ぽぁゅ! ぽよっ!」

たかいたかいをしてやると、チービィは嬉しそうに声をあげた。

マリオがチービィ達とかくれんぼをしているところに、ソニックとファルコが戻ってきた。
ソニックを見つけたチービィが、隠れていたテーブルの下から飛び出して駆け寄る。
チービィは、マルクから助けてくれたソニックにも懐いていた。

「おいおい、かくれんぼにならないじゃないか」

マリオが不満げな声を出す。

「ははっ、悪ぃ悪ぃ」

ソニックは、にっと笑った。

「マリオ…来客だ」

そこに、3人目のファイター、サムスがやって来た。

「ポニーテールの少女とおかっぱの少年。今ホールに入ったところだ。ポニーテールの子は金髪だが…」

サムスはそこで言葉を切る。言わんとしていることはマリオにもわかった。
“マルクの罠かもしれない”。

今まで子供達に混ざってかくれんぼをしていたのも忘れ、マリオは真剣な顔になった。

「サムス、その子達をここに連れてきてくれ。
リュカとカービィはチービィを連れて、ここの裏口から庭に出てて。
ファルコはチービィを見張っててくれ」

「オレがかっ? …ち、仕方ねぇな。
あんまりオレから離れんじゃねぇぞ」

子供達にそう言い、ファルコはポケットに手を突っこんで、渋々と外に出る。
彼はあまり子供の扱いが得意ではないのだ。

マリオはソニックと共にリビングに残った。
訪ねてきた子達がチービィの知り合いにせよ、マルクの手下にせよ、
チービィを城に保護したソニックに用があることは予想できた。

2人は固唾をのみ、訪問者を待つ。

ファイター達の口から語られた一部始終を聞いたフームは、ため息と共に椅子に倒れ込むように座る。
今この時点で理解するには、あまりにも情報量が多かった。

「とても信じられないわ…。それに平行世界だなんて、まるでSFじゃないの」

そう言いつつも、彼女の目からは先程までの険しい光が消えていた。
もうファイターへの疑念は無くなりつつある。

彼らの見解なら、この事態に説明がつくのだ。

まず、宇宙…もとい世界は1つではない、という。
魔法が存在する世界、様々な能力を持つ生き物と共存している世界、他の星々との交易が始まっている世界…。

フーム達がやって来たこの世界、『スマッシュブラザーズ』は他の多くの世界と繋がっている。
その一つ、“ファイターの”カービィの住む世界は、フーム達にとって“平行世界”の関係にあるという。
デデンが通用したのも、城まで来られたのも、2つの世界が非常に近かったために、“誤作動”の形で起こったことらしい。

非常に似ているが、異なる世界。平行であるために決して交差しない世界。
それらを無理矢理に繋げたマルクは、カービィを連れ去って何をしようとしていたのか?

「なぁ、そのマルクってやつの格好、もう一度教えてくれよ」

隣のブンがソニックに聞いた。

「ん? …赤と青の二股帽子に、黄色い骨組みの翼をはやした一頭身だ。“なのサ”ってのが口癖だったな」

「そいつだ!」

今度はブンがガバッと椅子の上に立ち上がる。

「ほら、あいつだよ。おれ達がここに来て森で会ったやつさ!
カービィを連れてったのはソニックだ、って言ってたやつ! 翼はなかったけどあとはそっくりだ!」

フームに向かって言う。

「なんですって?! …じゃあまさか…」

わざわざフーム達の前に現れて誘拐犯はソニックだと印象づけ、
そして城にも現れてファイター達に疑いの種をまいたマルク。その狙いは―

「わたし達をわざといがみ合わせてその間に…!」

その時、リビングの裏口から金髪の男の子が息せき切って駆け込んできた。

「…た、大変だ! チービィが…チービィがマルクに捕まった!」

 <A面 を セットしてください>
 <B面 を セットしてください>

裏話

ファイターはやはりヒーローです。(例外もいますが)
A面書いた時点で実はB面もおおかたできていましたが、最後のA×B面のめどが立たなかったので投稿に間が開いた記憶があります。
やっぱり、投稿してから路線変更があって書き直して載せるのもかっこわるいですし、読む方も迷惑でしょうからね…。

ちなみに、吸い込めないはずのマルクの攻撃を吸い込めたのは…アニメ補正と思ってください。
そういえば、確かアニメでは"マキシムトマト"が出てこなかったような記憶がありますが…この話を書くときに初めて気づいて、意外に思いました。
カレーに関する嫌な思い出とは、コックカワサキが作った激辛カレーを食べた記憶です。

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