気まぐれ流れ星オリジナル小説

英雄の行方

昔々、あるところに大きな国がありました。
その国は自然が豊かで活気にあふれ、まさに非の打ち所がありませんでした。
ところが、この平和な国には大きな影が迫っていたのでした。

ある日、その国でも指折りの魔法使いが、1人の勇者を呼んでこう言いました。

「勇者よ、お前に頼み事がある」

「なんなりとどうぞ」

勇者は誇らしげに胸を張りました。

「では用件を言おう。お前に怪物を退治して欲しいのだ」

「怪物…ドラゴンですか? それとも巨人ですか?」

「いや、未だかつて誰も見たことがない怪物のようだ。
昨日その怪物が、まもなくこの国にも迫ってくると占いに出た。
やつは目についたものを手当たり次第に破壊し、今までにいくつもの国を滅ぼしたらしい。次の標的はこの国だ。
そやつを打ち破る方法は1つしかない。
世界の果てにあるという砂漠の宮殿に置かれた剣で、怪物の胸をひと突きするのだ。分かったか?」

「はい、私にお任せ下さい!」

勇者は礼をし、部屋から出て行きました。

魔法使いは扉が閉まったのを見届け、ほっと一息つきました。

「やれやれ、これで楽ができる。
あいつめ、自分が大魔法使いだからといってわしに退治を押しつけてくるとは!
予言したのは自分ではないか! しかもわしのほうが年上なのだぞ? 年上を敬うのがものの道理ではないか。
…まぁいい。あの勇者がなんとかしてくれるだろう」

ところが、そうはならなかったのです。

勇者は自分の家で悩んでいました。

――確かに、自分は今までドラゴンや巨人なら倒してきたが、
世界の果てまで行くのはまっぴらごめんだ。得体の知れない怪物なんて尚更だ。
ああは言ったものの、自信なんて全くない。
…しかし今から断れば、自分の名声に傷がつくだろうな。

そう長々と悩んだ後、勇者はあることを思いつきました。

勇者は、馬小屋で馬の世話をしていた弟子を呼ぶと、こう言いました。

「今までお前はよく頑張ってきた。もうそろそろ一人前と認めても良いだろう」

それを聞いた弟子はぱっと顔を輝かせました。

「ただし」

勇者はこう付け加えました。

「私の出す課題に合格できればの話だ」

そして勇者は、魔法使いが言った話を手短にまとめ、怪物のことには触れずにただ剣のことだけを話しました。

「わかったら早速準備をするのだぞ」

勇者はそう言うと返事も待たずに、自分の部屋に入ってしまいました。

弟子が剣を取ってきたら、自分がその剣で怪物とやらを倒す。
そうすれば自分のメンツも立つだろうと、彼は思っていました。

ところが、そうはならなかったのです。

明くる日、弟子は勇者に見送られて旅に出ました。
生まれも育ちもこの国である弟子は、「この国の外が世界の果てだろう」と簡単に考えていました。
しかし、勇者から馬を貸してもらったものの、道のりは長かったのです。

ついにどことも分からない遠くの土地で、
馬には逃げられ、食糧も尽きた弟子は森の中で倒れ込んでしまいました。
でも幸運なことに、彼は近くに住んでいる農家の人に助けられたのです。
弟子は農家のおじさんにこう聞かれました。

「あなたは山のずっと向こうの国から来たそうですね。
一体なぜ、はるばると旅をしているのですか? よろしかったらお聞かせ下さい」

そこで弟子は、自分の師匠が出した課題について話しました。
すると農家のおじさんは奥さんと顔を見合わせ、そしてこう言いました。

「きっとあなたのお師匠さんは、
あなたがまだまだ頑張らなければいけないのだと分からせるために、そのような課題を出したのでしょう。
世界の果ては、並大抵の人に行けるところではありませんから」

その言葉に、弟子ははっとしました。
師匠はそんなことを考えていらしたのか! 一人前になれると有頂天になっていた自分が恥ずかしい…。

そうして、元気になった弟子はせめてものお礼をと、農作物の収穫を手伝い、自分の国に帰っていきました。

その後あの国はどうなったかって?
さぁ、占いは時に外れることもありますからね。

目次に戻る

気まぐれ流れ星

Template by nikumaru| Icons by FOOL LOVERS| Favicon by midi♪MIDI♪coffee| HTML created by ez-HTML

TOP inserted by FC2 system