気まぐれ流れ星二次小説

Open Door!

Track25『Solid State Survivor』

~前回までのあらすじ~

『スマッシュブラザーズ』に選ばれ、それぞれの思いを抱いて輝く扉をくぐったファイター達。
しかし、彼らは目的地とは異なる灰色の世界に連れてこられ、得体の知れない人形の軍勢によって1人、また1人と捕らえられていく。
そんな中、プロロ島の風の勇者リンク(トゥーンリンク)と、タツマイリ村の少年リュカが出会う。

次第に勢力を強め、操られていた仲間達を2人も取り返した彼らに、エインシャントは恐怖を抱いていた。
だが、彼らが自分たちの力だけでそれを成し遂げたとは思っておらず、この世界に閉じ込められているうちに潰してしまえば良いと結論付ける。
エインシャントは居城の付近で朽ちたままにされたロボット2体を復活させ、それらにバツ印の描かれた爆弾をファイターの潜む山脈へと運ばせる。
デュオンの反対も聞かず爆弾は起爆され、合流を遂げたばかりの9人は再び引き裂かれてしまう。


  Open Door! Track25 『Solid State Survivor』


Tuning

孤立無援の生存者

頭のてっぺんから足の裏まで、どこもかしこも風に包まれていた。
水のような感触を持った空気が肌にまとわりつき、耳の中には絶えることのない風がでたらめな合奏を吹き込んでいた。
あまりの風勢に4人は目を開けることもできず、ただ互いに繋いだ手を離すまいと固く握りしめていた。

そうしてどのくらい経ったことだろう。
早回しにしたレコードにも似た甲高い音が、次第に穏やかに、低くなっていった。
髪の毛や服を騒がせていた風の渦も遠ざかりはじめ、やがてそっと4人を解放する。

「着いたぞ」

リンクの声で、リュカは目を開ける。
だが、ずっと嵐の中にいたせいで前髪がもつれ、視界に覆い被さっていた。
頭を振り、払いのけてもう一度見る。

暗い。しかし、時刻はまだ昼のはずだ。

なぜこんなに暗いのか。
訝しんでいたリュカだが、目が慣れてくるにつれその理由が分かった。

暗く、広い空洞。彼らはその中に立っていたのだ。
周囲では巨大なプロペラが一定の間隔を置いて並び、ゆっくりと回っている。
重々しい音が地の底から響きわたり、ぬるんだ空気が暗がりの向こうから吹き上がってくる。
涼しい風が流れてくる方向を視線で追うと、彼方の壁には横に細長い光の線が入っていた。おそらく自分たちはそこから入ってきたのだろう。

他の3人も、つないでいた手を離し辺りを見渡していた。

「たぶん……換気扇ね。ここも工場なのかしら」

ゆるゆると回転するプロペラの列を観察していたピーチは、やがてそう言った。
工業用ファンの実物を見たことはなかったが、人の背丈を優に超える大きなプロペラを見た彼女に思いつくものはそれだった。

「ふーん、なるほど。こいつに引き寄せられたのかな?」

腰に手を当て、小手をかざしてプロペラを見上げるリンク。

「リンク」

その背に、リュカが声を掛けた。
振り返ると、彼は少し困ったような顔をして立っていた。
何をどう言うべきか迷っているようであったが、やがてこう問いかけてきた。

「なんで……なんで、船に戻らなかったの?」

風のタクトで脱出すると、この世界ではまさに結果は風任せ。どこに出るかは運次第になってしまう。
前回は数日歩いてやっと高所を見つけ、そこから次の目標を定めることができた。しかし、今回もそう上手く行くとは限らない。

もちろんリュカはリンクがその性質を分かった上で"疾風の歌"を使ったことを知っていた。
だが、わざわざそうする理由が分からなかったのだ。

「そうだな……リュカも見ただろ? あの爆弾が山を丸ごと飲み込んじまう様子をさ」

「うん」

リュカがそう答えると、リンクは大まじめに腕を組み、順序立てて説明をはじめた。

「操られて、爆弾を運んでいたロボット達。あいつらがおれ達のいる洞窟を知ってたとは思えない。
あいつらは偶然、あの通路に入ってきてたんだ。
その証拠に、ロボット達はおれ達に気づく前からあのでっかい爆弾を置こうとしてた。
おれ達がどこに潜んでるのか分からないのに、あいつらは当てずっぽうに置いたんだ。
それでも構わない理由はただ1つ」

そう言って、リンクは自信を持って人差し指を立てて見せた。

「あの爆弾がとてつもなく強力で、どこに置いたって山を丸々消し飛ばせるってことさ」

ぽかんと呆気にとられているリュカの後ろで、ピットが顔を輝かせる。

「やっぱり! だから外に出ようと言ったんですね?」

敬語が出てしまったことに気がつき、言い直す。

「……あのとき、僕らはマザーシップよりも外に近いところにいた。
爆発の届く範囲を考えれば、船に戻る時間はない。逃げるなら外に向かうべき。そう判断したんだね!」

「そう、そういうこと!」

リンクは大きく頷いた。
だが、ふとその顔から得意げな表情が消える。真剣な眼差しになり、向こうを見やった。

「……でもさ、あんなにすごい爆弾だとは思ってなかったな」

ぽつりと呟く。

彼の見る先には、換気洞の出口があった。真っ白な外の光が横に長く広がっている。
リュカもピットも、同じ方角を見つめしばし沈黙した。

彼らの目には、まだ鮮明に残っていた。
大きいとはいえ人の背丈ほどしかない球形の爆弾。それが引き起こした、山脈一帯の消失。
あとに残されたのは生理的な恐怖と拒絶を覚える、どこまでも暗く蠢く闇。

しかし、ピーチは安心させるように少年達に微笑みかけてこう言った。

「大丈夫よ、みんなも見たじゃない。マザーシップが飛び立ったところを」

3人はその言葉に顔を見合わせる。

「ああ、見た。でも……逃げ切れたかな」

爆弾で仕留められなくとも、山脈の地上と上空で待ち構える人形の軍団が寄ってたかって叩き落とす。そういう作戦だったとしたら。

リンクは腕を組み、ため息をついた。
が、いつまでもそうして立ち止まっているわけにはいかない。
気合いを入れ直し、3人にこう言った。

「……今はとにかく、おれ達がどこに出たのか確かめよう。
そうすりゃ後のことも決まってくる」

3人は気がかりを残しつつも前向きに進もうと、まばらに返事を返し立ち上がりかけた。
その矢先。

 "ガラン……"

換気洞に硬い音が響きわたった。
リンクとリュカは、はっとして辺りを見渡す。

「あ……すいません、僕です」

ピットが手を挙げた。
彼は床に膝をつき、立ち上がりかけた格好で壁に手をついている。
その腰に付けた何かが壁の配管にぶつかり、先ほどの音を立てたのだ。

しかし、彼はそれが何であるか心当たりがないようだった。
少し戸惑った様子で彼は腰の横に手をやり……目を丸くした。

「そうだ……これがありました!」

顔を輝かせ、そう言ってピットが掲げたものは、黒い箱状の機械。
一昨日の作戦で彼が預けられた、通信機だった。

曇天。
のっぺりと空を覆う、鈍色の雲。その腹は風に梳かれて暗く波立ち、今にも一雨降ってきそうな様子である。
そんな境界のない雲の群れをかすめるようにして、楕円形の宇宙船が全速力で駆けていた。
灰色の山脈から命からがら脱出してきたマザーシップだ。

装甲はまだ直りきっておらず、後ろの方では鉄色の内部構造がむき出しになっている。
だが、推進機構から先に修理していたのが幸いし、何とか爆弾の災厄から逃げ延びることができた。

人形兵の包囲から距離を稼ぐため、彼らは山脈を出てからずっと一直線に飛び続けている。
しかし、その方角は東南東ではない。エインシャントの輸送機が最後に姿を消した方角とは別の方角へ、彼らの船は向かっていた。
崩壊する山脈から、そして全てを飲み込む闇から逃れるだけでも精一杯だったのだ。

数機ほど追ってきていたフライングプレートも天候の急な悪化を見て航行を諦めたのか、
逃げるマザーシップに威嚇射撃すら行わないままどこかへ飛び去ってしまった。
現在マザーシップは外殻の修理を続行するために、船を隠せる場所を探している。

追う者もなく、風ばかりが虚ろな音を立てて船の外を過ぎ去っていく。
雨天の手前で均衡を保ち、静かにたゆたう空。しかし、その空を行く船内に満ちていたのは安堵の空気などではなかった。

操縦室。
座席に腰掛け、いくつもの仮想モニタを周囲に展開させているのはサムス。
彼女は一心にモニタを見つめ、操作球の上に両手を走らせていた。

そんな彼女の後ろには、船にいる4人のファイター全員が立っていた。
緊急離陸の艦内放送が入った時に操舵室に駆けつけ、そしてそのまま戻れずにいたのだ。
皆それぞれの感情と共に、操縦席の背を黙って見つめていた。

やがて沈黙に我慢できなくなったのか、カービィが小声でマリオに問いかけた。

「ねぇ、ほんとうに良かったのかな……」

マリオは真剣な眼差しを前に向けたまま、しかし声に自信をこめて答えた。

「ああ、大丈夫さ。リンク達は今まで2人でやってきたんだろう?
今さら、あんなものでやられる訳がない。ピーチもピットも、あの2人と一緒なら大丈夫だ」

「うん、そうだよね」

小さく頷き、カービィは視線を操縦席に戻した。

そのやり取りを隣で見ていたルイージは、胸がちくりと痛むのを感じた。
弟である彼には分かっていた。口にはしていないが、兄だって本当は心配なのだ。
リンク達のことが。そして、ピーチ姫のことが。

そして、それは緊急発進を決断した当の本人も同様であった。
だがサムスはマリオと同じく、その上で彼らの無事を信じていた。

そこには大した根拠などない。強いて言うならば"彼らなら何とかしたに違いない"。
だからその思いは、確信というよりも願望に近かった。

サムスはきつく口を引き結ぶ。

――私は……信じている。

それは決して、厳しい現実から目を背けているのではない。
正面のモニタに映る、見渡す限りの暗雲。彼女はその先を見透かそうとするように、目を凝らしていた。

不意に、その視界の端で輝くものがあった。

バイザーの右端に現れたのは、点滅する文字列。
全く予想外の出来事に、サムスがその文字の意味するところを理解するまでに十数秒の時間が掛かった。

彼女は何事かを呟き、急いで仮想モニタに右手をやる。
2、3の操作でスーツの受け取った通信が母船の無線装置に受け継がれた。

サムスの急な動きに事態の変化を察し、後ろに控えるマリオ達にさっと緊張の波が走る。

灰色のノイズが操縦室に流れはじめた。
その場にいる5人全員が、耳を澄まして待った。

やがて、声が雑音の彼方から聞こえてきた。

『――聞こえ…………か? ……応答……います…………』

砂をこするような音に、今にもかき消されそうな声。
しかし、それは紛れもなくピットの声だった。

一瞬の空白。
そして、船内に音が戻ってくる。

「やった……無事だったんだ!」

声を弾ませてルイージが言う。

「な、言ったとおりだったろ?」

そう言うマリオは満面の笑みを浮かべていた。
そんな彼に、幼い歓声を上げて横からカービィが飛びつく。
歓喜する3人の横でメタナイトは何も言わず、しかし"Sound Only"とだけ表示されたモニタをじっと見つめていた。

眼差しから過度な緊張が消えたのは、サムスも同様であった。
だが一瞬たりとも手を休めず、彼女は通信の感度を上げようと努力する。

操縦室内の音声も全て発信されるように設定していたので、向こうにも今までの船内の様子が伝わっている。
彼らも雑音の中にそれを聞いたらしい。

"何か聞こえなかったか?"
"本当?"

そう言っているだろうと思わせる声が、通信に混じった。
声は複数。船内の誰もが4人全員の声を聞き取ったように感じた。

ざわめく操縦室から、サムスはノイズの彼方に呼びかける。

「こちらマザーシップ。通信を確認した」

途端に、向こうが騒がしくなる。
雑音などではなく、意味のある声が飛び交っている。
そして再びピットの声が返ってきた。

『――その声は……サムスさん、あなたですね! やっぱり、無事だったんだ!』

「ああ、5人とも無事だ。そちらは?」

『全員無事です!』

はっきりと、彼は言った。
サムスはバイザーの後ろでそっと安堵のため息をつき、次いで声を改めて尋ねる。

「今、どういう状況だ?」

『はい、えっと……どこかの空洞にいます。金属でできた。
換気扇カンキセン……がたくさん回っていて、僕らの他には誰もいません』

その返答を聞きつつ、サムスは信号の発信源をAIに追わせていた。
すぐに現れた簡易結果は遠くもなく近くもなく。
それを見届け、サムスは念を押すように問いかけた。

「少なくともまだ人形兵には見つかっていないんだな?」

『はい。ここに着いてからはまだ、誰にも』

「よし、今から君達の元に向かう。君達はそのままそこに……」

突然、そこで操縦室内に大音量の雑音がまき散らされる。
感度を最大にしていたため、室内はホワイトノイズであふれかえった。

「どうしたんだ、敵に見つかったのか?!」

マリオは片耳を押さえつつ操縦席に駆け寄り、もう片方の手で席の肩をつかんだ。
サムスは振り返らず、しかし首を振って無線の音量を速やかに絞る。

「直接的に見つかった可能性は低い。
……だが、間接的に見つかったことは間違いない」

「つまりどういうことなんだ?」

急かすマリオに、サムスは向き直るとこう答えた。

「これは、通信妨害だ」

静まりかえった室内に、彼女の声だけが響く。

「気づかれたのだろう。人形兵より高次の存在……おそらくはエインシャントに」

マザーシップで出された結論に、ピット達が至ることはなかった。
彼らは折しも、換気洞の非常扉を開け建物内の狭い通路に入ったところだったのだ。
通信中に光の見えている通気口の方も回ってみたのだが、近づいてみると思っていたよりも開口部は狭く、
顔を出すのが精一杯で、とてもではないがくぐり抜けられそうになかった。

隙間から見えた景色は一面の灰色。真っ平らな砂漠が地平線の果てまで広がっていた。
ついこの間まで戦っていた山並みも、崩れ落ちた黒塗りの塔も、見慣れた景色はどこにもなかった。

自分たちのいる場所を把握するために行くべき方向は、あとは建物の中しか残っていない。

「たぶん、電波が届かなくなったのだわ」

一様な雑音しか流さなくなった通信機を心配そうに見つめる少年たちに、ピーチはそう言った。
その顔を見上げ、リンクは真剣な声で尋ねる。

「じゃあ、サムス達は無事なんだな?」

「ええ」

心配する要素は探せばいくらでもあったが、ピーチは強いてそれを隠し、頷く。
リンクも頷き返した。その顔にいつもの明るさが戻る。

「……よし、それじゃこのまま進もう」

そう3人に呼びかけた。

タイミングの悪いことに、リンク達が聞き取ったサムスの言葉は"君達の元に向かう"、そこまでで途切れていた。
船で迎えに来るなら暗い換気洞の中ではなく、開けた土地に出ていた方が良いだろう。
彼らはそう結論づけてしまった。

鈍色の通路を、足音を潜ませて進む4人のファイター。
その背を、じっと見つめる存在があった。

工場の監視室には、1体の巨大な機械の姿があった。

「ウゥゥ、あいつら、またしてもオレの前に……!」

低く唸るように言い、ガレオムは右の拳を地面に打ちつける。
金属の歪む鈍い音と共に監視室のぶ厚い床が拳の形にへこんだ。一方、彼の拳には傷一つついていない。
変形戦車ガレオムはついに谷底への墜落からよみがえり、新品同然の姿でそこに立っていた。

鋼の身体には曇りさえなく、全身に満ちる力は以前よりも増したように思える。
そんなガレオムを諫めるように、背後から声を掛ける者があった。

『つまらない感情など捨てろ。お前の2度にわたる失敗の理由……それを忘れたとは言わせん』

宙に浮かぶ小柄な青い幻。
向き直ったガレオムは不服そうに、しかしすぐに頭を下げる。

「……分かってますとも、エインシャント様。オレは十分反省しました」

それに対し、エインシャントはただ疑わしそうにその双眸を細めるだけだった。

『何にせよその方面にいる最上級兵はお前しかいない。
ガレオムよ、奴らの合流を阻止するのだ』

「はっ、お任せ下さい!」

ガレオムは胸を張り、意気揚々とそう応える。
頷く気配があり、彼の主はその場を離れた。

それを見届けて、ガレオムは再び監視室のモニタに向き直る。
通路を進む4人のファイター。彼らを一心に見つめるガレオムの瞳は、暗く鈍く光っていた。
鉄の拳がきりきりと耳に触る音を立てて握りしめられ、震える。

「お前らのせいで、オレは……」

その声にありったけの憎しみをこめてガレオムは呟く。

彼の記憶回路は崖から墜落した際に損傷していた。
そのため直前までの記憶が所々消失し、意味を成さないデータになっていた。
ピースの足りないパズルのごとく、補正されなかった彼の記憶は正しい形を失い、歪んでいた。

ガレオムは、あの時彼に致命傷を与えたファイターの姿を忘れていた。
谷底に突き落とされ、まんまと罠にはめられた屈辱。空白の中に消えた復讐の対象。
行き場を失った感情ばかりが心の中で荒れ狂い、膨れ上がっていく。

彼はその矛先を、今目の前に現れたファイターにぶつけようとしていた。
すなわち、崩れた記憶の中で辛うじて鮮明に残っていたファイター、リンクとリュカに。

くつくつと押し殺した笑いを上げ、ガレオムは言った。

「いいぞ、そのまま進め! そしてオレの元に来るが良い!
くくくっ……ふはは、ははははははッ!」

狂気じみた哄笑ががらんどうの監視室に響き渡り、四方の壁を不穏に揺るがせていた。

人形兵の監視網から漏れた、忘れ去られた一室。
白い室内灯だけが、そこに立てこもる1人の獣人を見守っていた。

彼は壁に背を預けて座り、極力体力を消耗しないようじっとしていた。
そんな彼の周りにはくしゃくしゃになった袋や何かを書き付けた紙、空になった透明なボトルがまばらに円を描いている。
その量が、彼がここまで生きてきた日数を示す証だった。

彼は背を震わせ、音をひそめて咳をする。
疲労に曇りかけた目をゆっくりと瞬き、彼は半ば上の空でこう思った。

――咳をしても1人……か。

辺りは耳がしんとなるほどの沈黙に包まれていたが、人恋しさを紛らわせようと呟くことはしない。
壁を一枚挟んだ周囲には緑帽子の敵が巡回している。
そしてそれ以前に、彼にはもう声を出すほどの余裕が残されていなかった。

食糧ならば地階で見つけた食料庫に有り余るほどある。
深刻なのはむしろ水の不足だった。
持ち合わせと、食料庫で見つけたボトル。それを合わせてもあと何日も持たない。

必要以上に動かないことで出来る限り消耗を減らしていたが、
敵に見つかるのが先か、乾きで力尽きるのが先か。どのみち待ち受けるのはフィギュア化のみ。

そんな彼の希望をつなぐのは、ある機械の製作だった。

彼の傍らには金属の塊が置かれていた。アンテナとスイッチを備えた、辛うじて通信機だろうと分かる物体だ。
不時着し、手で持てるだけの食料を持って工場に転がり込んだ彼だったが、幸い身を潜めた部屋は予備の電子機器を置く小型の倉庫だった。
ひとまずの安全を確保し、周囲を見渡した彼はここにある物資から通信機を作ることを思いついた。
彼のクルーにいるエンジニアほどの知識は無いものの、数週間の苦労の末、彼は簡素な無線機を作ることができた。

後は、敵に見つかる心配のない安全な屋外を見つけて救難信号を送るだけ。

――……だが、誰の応答も無かったら?

彼はその白い眉をひそめる。

ここは一体どこなのか。
それが、扉をくぐって間もなく謎の集団に迎撃され、乗機を失ってしまった彼の抱える一番大きな疑問だった。

――ライラット系の存在する"宇宙"や『スマブラ』なら良い。きっと誰かが俺の信号に気づいてくれる。
だが、そのどちらでもなかったら……?

そこまで考えて、彼は静かに首を振った。
今はこうするほか無いのだ。試してみるまで何事も分からない。
とにかくやってみるだけやってみよう。後のことはそれから考えれば良い。

そして彼は目を閉じ、再び壁の外に意識を集中した。
敵の足音が知らせる巡回のパターン。それが途切れる瞬間、すなわち脱出の時を待って。

何時間経っただろうか。
ふと、彼は目を開く。その目は何も見てはいない。
むしろ彼の全意識は聴覚に集中していた。

――誰か来る。

近づいてくる足音。
それは今まで敵兵が踏み込んでこなかった境界を越え、ますます接近してくる。

ついに気づかれたか。

彼はそっとブラスターを抜き、音一つ立てずに立ち上がる。
部屋に唯一ある扉。その横に背をぴたりとつけて、待った。

耳を澄ます。
足音は複数。
硬い音が1つ、柔らかく小さい音と中程度のものが1つずつ、そして中間の質感を持った音が1つ。

それらがすぐそばまで近づき、止まった。

そして扉が開く。

「……」

ふっと息をつき、彼は扉の隙間にブラスターを突きつけた。
しかし、目の前に現れた者を見て、引き金に掛けた彼の指がためらう。

緑の服、とがった金髪の少年。
見覚えがあるが、同時に見慣れない姿。

少年は自分に向けられた銃ではなくそれを構えるこちらの顔を、目を丸くして見ていた。
そして彼はすっとんきょうな声を上げる。

「うわっ……キツネだ!」

これには、今度は獣人の方が面食らってしまった。
この少年はどう見ても敵とは思えない。
しかし、数十日間に及ぶ孤独が彼の思考速度を鈍らせていた。目を丸くし、彼はその場で硬直していた。

予想外の事態に、銃を下げることも問いかけることもできず、ただ凍り付いたように立ちすくんでいる獣人。
目の前に突きつけられた銃を怖れることもなく、ぽかんと口を開けている少年。
そしてその後ろから、もう1人の人物が現れる。

白い手袋をはめた手を入り口の縁に添え、金髪の女性が顔を覗かせる。
頭に小さな冠を頂き、優雅な桃色のドレスを着た王女。

その顔を見て、獣人はようやく我に返りはっと目を瞬かせた。

「ピーチ……」

今にも消え入りそうな声で、彼は呟いた。
ブラスターを持つ手がゆっくりと下がっていき、ため息と共に彼は俯く。

が、しばらくして彼はきっぱりと顔を上げた。
その表情には、疲れと共に隠しようのない喜びが現れていた。

「……俺はフォックスだ。キツネじゃない」

にっと口の片端で笑い、彼はかすれた声で少年に言った。

まず互いに自己紹介を済ませ、5人は小型倉庫に車座になって状況を確認し合っていた。

「つまり、ここは『スマブラ』に近いが、同一ではない世界……ということなんだな?」

そう尋ねるフォックスの目には、もういつもの鋭さが戻りはじめていた。
先ほどの少年からもらった水筒と赤いチュチュゼリーで、ようやく人心地がついたのだろう。

ピーチは頷く。

「ええ。そして、エインシャントという人物が私達をここへ引き込んだの。
彼がこの世界を支配していて、たくさんの兵士を使って私達ファイターを捕まえようとしている。
私も、ここにいるリンクとリュカも何度となく狙われたわ。
あなたが危ないところで捕まらずに済んだのは本当に幸運だったわね」

灯台もと暗しとはこのことか。
フォックスは、他にやむを得なかったとはいえあえて敵の懐に飛び込んだことで、今まで生き延びることができたのだ。

ねぎらうように言ってから、彼女はこう続けた。

「サムスは、エインシャントの目的を他の世界の征服と見ているわ。
……既に捕まってしまった仲間はその目的のために、みんな彼の操り人形にされてしまったの。
一時期はもう少しで助け出せるところまで来たのだけれど……」

「……」

顔を曇らせるピーチをじっと見つめ返し、フォックスはしばらく黙っていた。
どうやら予想していたよりも事態は深刻だったらしい。危険にさらされていたのは自分だけではなかったのだ。

彼の脳裏によぎったのは、スターフォックスのクルーであり、同じくファイターに選ばれた仲間、ファルコ・ランバルディ。
「先に行っててくれ。オレも後から行く」
船の廊下で肩越しに振り返り、そう言った彼の言葉が耳によみがえる。

フォックスは思考を切り換え、尋ねた。

「……それで、こっちの人数は?」

「あなたを入れて10人になったわ。10人のうち4人は、この子達みたいに新しく選ばれたファイターよ。
あなたは?」

「俺は……1人だ。ファルコは、ここに来たかどうか分からない」

そう言って首を振ったフォックスに、緑の服の少年が身を乗り出した。
記憶にあるハイラルの青年と同じ、"リンク"という名前を持つ少年だ。
彼はこう尋ねてきた。

「ってことは、フォックスはたった1人で、ずっとここに立てこもってたのか?」

「ああ。もう何日になるかな……最初は数えてたんだが、段々自信が無くなってきてやめた。
何しろここには日の光が届かないからな」

「へぇぇ……すっごいな!」

目を丸くし、素直に感心するリンク。その反応にフォックスはちょっと困ったように笑った。
今の自分は半ば生身ではないとはいえ、これほど長い間立てこもっていれば、自分の毛並みはお世辞にもきれいとはいえない状態になっているだろう。
でも、そんな自分に向けられた少年の目は純粋な尊敬の念で輝いていたのだ。

リンクの隣からピーチがこう言った。

「私達の状況はだいたいそういうところよ。今度はあなたの見たものを教えてくれる?」

「そうだな」

フォックスは一つ頷き、記憶を整理しながら語りはじめた。

「いつもと同じように、俺はアーウィンに乗って『スマブラ』に繋がるワームホールをくぐった。
ファルコは後から行くと言って、俺とは一緒に来なかった。
それで、出た先で待ちかまえていたのが奇妙な形の飛行物体。
戦闘機と言うより輸送機に近い、プレートみたいな飛行機が何十機と編隊を組んでいた」

彼はそこで、一度言葉を切る。
空を埋め尽くすフライングプレート。それが整然と虚空に並ぶ、非現実的で異様な光景を思い返す。
全ての機体が等間隔に並び、まるでコンピュータグラフィクスの投影でも見ているかのようだった。だが、あれは幻ではなかった。

「こちらが誰何するよりも先に、相手は攻撃を開始した。
急いでシールドを展開し空域を脱出しようとしたが、敵の攻撃があまりにも激しく……。
やむなく、航行不能となったアーウィンを砂漠に墜落させ、巻き添えになったと見せかけて船を抜け出した。
その後で様子を見に行ったら緑帽子の、君達が言うところの"人形"がアーウィンを包囲して何かを調べていたな……。
今思えば、フィギュアになった俺を見つけ出して連れ去ろうとしていたんだ。
後は見ての通り。人形がアーウィンに気を取られている隙に俺は近場にあったこの工場に忍び込み、今日までずっと身を潜めていた」

ここまでを一気に喋った彼はそこで一息つき、水筒に入った水を飲む。
口いっぱいに広がるうるおい。それを感じるのは久しぶりのことだった。
少しの間目をつぶり、そして顔を上げると続きに入った。

「……頃合いを見て時々ここを出て工場内を探索してみたが、かえって分からないことが増えるばかりだった。
だが、君達の話を聞いた今なら、少なくともここで何を作っているのかははっきりした。
山脈一帯を消し飛ばした、バツ印の描かれた爆弾。この工場は、それを作っている」

黄色いバズーカを構えた緑帽の人形が、ゆっくりと通路を歩いていく。
機械的に左右を見ることを繰り返し、規則正しく足を運んでいる。
人形はそのまま通路を進み、やがて曲がり角の向こうに姿を消した。

それを見届けて、フォックスは後ろの4人に言った。

「……よし、今だ」

先頭に立ち、足音をひそめて先へと進む。

巡回パターンの隙を突き、決して人形兵に見つからないルートを取る。
今までずっと工場内に閉じ込められ、兵の目を盗んで食料を得る術を試行錯誤してきたフォックスにとっては簡単な芸当だった。

間もなく彼らの進む通路は、その左側がガラス張りになった区域に出る。
しかし、ガラスの向こうは外ではなく、暗く赤い光に満たされた空間。
走りながら、ピットはその窓の向こうを見た。

建物の全層を貫くようにして、はるかな下まで空間が広がっている。
錯綜する金属のパイプライン。そして、いくつも連なる巨大な機械。
ピットはその様子に既視感を覚えた。
彼がかつて潜入した大工場。そこで人形を作っていた設備と似ているのだ。

だが、ここで作られているものは人形ではなかった。

走りながら窓に近づき、彼はその下を覗き込む。
地下に向かってパイプが合流していき、収束する先。大樹の根元に置かれていたのはあの爆弾であった。
球形の殻は2つに分かれ、内部の透明な筒に上からパイプが接続している。
暗くてよく見えなかったが、おそらくはあの筒の中に機械で凝縮させた"闇"を詰めているのだろう。

ピットの様子に気がつき、フォックスが確認するように問いかけた。

「君達が見た爆弾は、あれと同じだろう?」

「……はい。おそらく」

爆弾から目をそらさず、ピットは答えた。
そのやり取りに、リンクとリュカも窓に近づき、その向こうを見ようとする。
しかし彼らでは身長が足りず、爆弾の姿を見ることはできなかった。

何十という機械の立てる轟きが、ぶ厚いガラス越しに通路にも低く響いている。
設備は滞りなく稼働しているようだ。

だが、ピットは怪訝そうに眉をひそめる。
大工場で見た設備に比べると、生産速度が著しく遅いのだ。
彼らがこの通路に入ってからしばらく経ったが、爆弾はまだ充填を終えていない。

それだけあの爆弾の生産には時間が掛かる、ということなのだろうか。

そう考えていたところにフォックスの声が届く。

「止まってくれ」

左の腕を横に、制止する。
すぐに4人は立ち止まり、彼の見る方向に注意を向けた。

遮るもののない通路の向こう。閉ざされた扉が1つ。
リュカやピット、ピーチの耳では何も聞き取ることはできなかったが、フォックスとリンクにはそれが聞こえていた。

ガラス越しに響く機械の駆動音、それに紛れてかすかに近づいてくる足音。
それが歩くのはドア一枚を隔てた向こうの通路だ。

彼らは息をひそめ、心の中で祈りながら待った。
人形が何にも気づかず、通り過ぎることを。

足音は徐々に近づき……そしてドアの前で止まる。
リンクは弓に手を伸ばしかけたが、フォックスがそれをとどめた。
彼の右手にはすでに鉄砲のような形をした武器が構えられている。
その鉄砲に火縄が見あたらないことに気がつき、リンクはちょっと驚いたように目を瞬いた。

ドアに向けられる、5人の視線。息を詰めて待つ間にも、工場の中に林立する機械の木々は複雑なリズムのドラムを奏でていた。
ときおり混じる鋭い打音は扉の開く音と紛らわしく、それが鳴るたびに5人の間にさっと警戒の波が走った。

向こう側にいる人形はこちらに気づいたのか、それとも。

やがて、再び足音が始まる。
それはドアの前を通り過ぎ、そして遠ざかっていった。
ゆっくりと氷が溶けていくように、5人の背からも緊張が消えていった。

十分に時間をおき、フォックスは振り返ると左手でついてくるように合図する。

「行こう。早く窓のないところへ」

進むのならば、完全に囲われた通路よりも開けた通路の方が気は楽かもしれない。
しかし見晴らしが良いということは相手にとっても同様。
見つからずに逃げたいのならば、退路や隠れ場所の確保出来る道、すなわち分岐や曲がり角の多い道を進んだ方が良い。

先頭を進むフォックスの腰には、ブラスターの他にもう一つ大ぶりな機械がげられていた。
両手で抱えるほどの大きさの、金属と配線で団子を作ったような不格好な機械。彼が今まで作っていた手製の無線機である。
仲間と合流した今その無線を使う必要は無くなったのだが、それでも彼は無線機を携えていた。

「まぁお守りみたいなものさ」
部屋を出るとき、ピーチに理由を尋ねられたフォックスはそう冗談めかして言った。

無線機の御利益かどうかは分からないが、
彼らは今のところ、フォックスさえも足を踏み入れたことがない区画に出ても人形と鉢合わせることなく進めていた。

遠くから足音を察知するたびに迂回しつつ、一直線に進む。そうすればいずれどこか工場の端に辿り着くだろう。
囲まれそうになっても工場内にはいくつもの打ち棄てられた部屋があり、それが格好の隠れ場所になった。
人形は不審を感じない限り通路内しか巡回しない。そういう性質があるらしいとフォックスは言った。
だからこそ今まで自分は生き残ることができたのだ、と。

ところが、フォックス達がT字路を右に曲がろうとしたその時だった。
行く手の天井から音もなくすとんと球体が落ちてきた。
緑色に輝く小さな突起を持つ、黒く丸い物体。それは地面から少し浮かんで静止する。

こちらに近づいてくる訳でもなく、球体はゆっくりと回転しながら宙に居座るのみ。
通路を塞ぐ形になった球体を前に5人は立ち止まった。

「あれはおそらく、機雷だ」

フォックスはそう言って油断無く球体を見つめる。

「キライ……?」

リュカは小さく呟き、首を傾げる。

「要するに爆弾だ。何かが触れると爆発するようにできている」

振り返らずにフォックスは答え、それを聞いたリュカは少し目を丸くし、機雷から距離を取ろうと後ずさった。

「じゃあ弓で何とかなるよな」

そう言ったリンクに、フォックスは首を横に振ってみせる。

「今ここで爆発させるとまずい。音で人形達に気づかれてしまう」

「あっ、それもそうだな……」

しまった、というように眉をしかめて、少し考える間があってリンクは相手の顔を見上げた。

「でも、それじゃあ遠回りするしかないのか?」

「仕方ないが……」

フォックスはそう言って、きびすを返す。
他の4人も彼に従って左の通路に入っていった。

しかしそれ以降、彼らが目ざす方角に進もうとするたびにまるで狙ったかのように黒い機雷が立ち塞がり、
あるいは、まさに進もうとした通路から人形兵の巡回が近づいてきた。
三度目までは訝しむだけでいられたが、それが度重なってくるにつれ5人の間には緊張が高まっていった。

誘導されている。

口には出さなかったが、彼らは無言のうちにその直感を共有していた。
だが、そう分かっていても進むしかなかった。立ち止まっていれば巡回兵に見つかってしまう。
行く先に何が待ち受けているとしても、ここから逃れ出る道はない。

彼らの進む行く手は次第に一本に定められ、背後のどこか遠くではシャッターの閉まる音が等間隔で響いていた。

何度目になるか分からない機雷が彼らの前に現れる。
今度は引き返さずに、フォックスはブラスターを手に取った。

「どのみち相手は、もう俺達のことに気づいているようだな……。
あれを撃つ。爆炎が晴れたら、一気に突破するぞ」

その口調には、無意識に仕事柄が現れている。

誰も異論を唱えなかった。
フォックスは静かに腰を落とし、両手でブラスターを構える。

一閃。

機雷は派手な音を立てて炸裂し、緑色の光をまき散らした。
すぐに背後からいくつもの気配が近づいてきた。無数の足音が夕立を思わせる勢いで迫ってくる。
だがここで捕まるわけにはいかない。機雷の放ったエネルギー波が収束するのを待ち、5人は一斉に駆けだした。

彼らの行く手には、次々と人形達が現れる。
もう身を隠すことに拘ってはいられなかった。
5人のファイターはそれぞれの武器をもって、兵を倒し血路を開く。

しばらくそうして走り続けていたファイター達だったが、不意にその1人、リュカが足をすくませ立ち止まった。
何事かと、フォックス達も立ち止まる。

少年はわずかに俯き、立ちすくんでいた。
驚いたように見開かれたその瞳にあるのは紛れもない怖れ。

すぐに勘づいたリンクが尋ねようとした。
しかしそれよりも早く、リュカは弾かれたように顔を上げ、叫ぶようにして言った。

「来ます! ……この下から!」

彼らの反応は早かった。
二手に分かれ、急いでその場から飛び退く。

次の瞬間、爆発音が轟き、床下から吹き上げるようにして煙があふれた。
それと同時に彼らの逃げ道を阻むようにシャッターが素早く下りる。

煙が晴れると、今まで5人が立っていた場所に大穴が開いていた。
前後はぶ厚いシャッターに塞がれ、出口は床の穴、白い光をあふれさせる裂け目しかない。

「さっさと降りてこい! さもないと通路ごと撃ち抜くぞッ!」

荒々しい声が下から響いてきた。
リンクとリュカはその声に聞き覚えがあった。

「ガレオム……?」

「あいつ、まだ生きてたのか!」

穴から距離をおいて立つ彼らに、ガレオムは苛立ったように声を張り上げる。

「今から3つ数える! 覚悟しろ!」

口をつぐみ、互いに真剣な視線を交わし合うファイター達。
ガレオムの声の遠さからして、下の階の床までは相当な距離がある。
切り出したのはピーチだった。

「行くしかないようね。
ピット君、2人をお願い。フォックスは私と」

そして彼らは、床の裂け目に飛び込んだ。

Next Track ... #26『Double Trouble』

最終更新:2015-07-22

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