気まぐれ流れ星二次小説

仮面・剣士・一頭身

私は『スマッシュブラザーズ』の主であるマスターハンドから招待を受け、この世界を訪れた。
カービィから聞いたとおり、『大乱闘』では様々な世界の英雄や戦士、
そして姫や魔王と技を競い、あるいは共に闘うことができる。

私は自分の力を確かめるだけでなく、新しい戦法を見つけることもできた。
その点では、私はここに来て良かったと思っている。

だが……

スタジアムから離れたところにある草原。
そこにある丘の上には、近くの森からはぐれた種が根付いたのか木が一本だけ生えている。

その木のそばで剣士が一人、その剣を振るっていた。
しかしあまりの速さに剣が動く軌跡を目で追うことができず
あたかも剣の構えを変えただけで目の前の草が切れているように見える。

一方、木の下にあるベンチにはピンク色で丸いひとが座っている。

赤い足を退屈そうにぶらぶらさせているところを見ると
目の前で熱心に剣の稽古をしている仮面の剣士の技を
見学しに来たわけではなさそうだった。

実際、彼、カービィは彼の友達を遊びに誘うために来ていた。

いつもなら全く相手にされないうちに他の友達、ネスやリュカ、トゥーンリンクなどが来て
彼らと遊びに行くところだったが、その日は違った。

カービィとよく似た姿を持つ剣士、メタナイトは、ふいに剣をしまった。

「終わったの?」

目を輝かせてベンチから降りたカービィに対し、彼は草原の向こうを向いたまま言った。

「話があるのだが…」

「話って何?」

ぼくは隣に座っているメタナイトに聞いた。

「私は…そろそろポップスターに帰ろうと思っている」

「えっ?!」

メタナイトが本気で言っていることは仮面からのぞく目でわかった。

「でも、なんで?まだここに来てから少ししか経ってないのに…」

「カービィは確か、この世界が開かれた初めの頃から
ここにファイターとして来ていたな?」

「…うん」

「初めて他のファイターに会ったとき、何か違和感を感じなかったか?」

「そうだなぁ…
みんな背が高いなーとか…
…あっ、アドレーヌみたいなひとが多いなーとか思ったよ
でも、すぐなじめた!」

「そうか……
…私はなじめそうにない」

だから帰るのかな?
でも、プププランドにいても修行ばかりしてるくらい、強くなりたいと願ってるメタナイトが
なじめないからってここを離れるのはなんだか変だ。

「“頭身”という言葉はわかるか?」

「うーんと、頭とその他の…体の長さのバランス…だっけ?」

ぼくはメタナイトがなぜ、いきなり頭身の話を始めたのかがわからなかった。

「そんなところだ。
例えば私やカービィは1頭身。
ポップスターにいる者もたいてい1から2頭身だ」

「ここの相手が大きすぎて戦いにくいの?」

「いや、そういう訳ではない。
…ファイターの中で一頭身であるのは
カービィに、プリン、そして私くらいだったな」

「うん…そうだね」

「だが剣士であるファイターは大抵、5から7頭身」

「トゥーンリンクは?」

「ああ、彼は子供だから頭身は低いが…しかし3頭身はある。
1頭身の剣士である私の姿は、ここでは普通ではない…」

「また私はここに来て、頭身の低いものほど『かわいい』と呼ばれることを知った。
そして1頭身がその究極にあることも」

「確かにぼくやプリンはよくピーチ姫とかに
『かわいいわね~!』って言われるなぁー…

カービィはピーチ姫の声をまねてみせる。

「でもそれって褒められてるんじゃない?」

「私にとっては褒め言葉ではない」

そうだ。私は仮面とマントを身につけた剣士。
兵を率いて戦艦を持ったこともある私に、『かわいい』という言葉はそぐわない。
しかしこの世界では、私のような1頭身は総じて『かわいい』となってしまうのだ。

「1頭身のファイターがみんなかわいいって言われるのが気になるのかぁ…
…うーん、じゃあいっそ…」

と、カービィは私の目をのぞきこみ、言った。

「その仮面、はずしちゃえば?」

「なっ!…何を言うかと思ったら…
……それだけはできん!」

「アハハ、冗談だよー!」

全く…変な提案をするものだ。
仮面があって良かった。
もし私の驚いた顔を見たら、カービィは笑い転げるところだろう。

しかし…この笑顔を見ると、私にマスターからの招待が届いた日のことを思い出す。

カービィは私と陛下の参戦を誰よりも喜んでくれ、
私達を他のファイターに紹介して回っていた。

私がライバルと認めるカービィには、私が帰ることを知らせておこうと決めたが
あの日のことを思い出すと、それは彼にとって少し酷だったろうかと思ってしまう。

私の視界のはじには、さっきまで笑っていたカービィが空を見上げ、
考え事をしているのが見えた。
その横顔には、初めに私がここを去ると告げたときのとまどいが残っていた。

彼にはかわいそうだが…しかし私にもプライドがある。
この間、遠くの世界から来たという傭兵の男との試合になったが、
その際に、彼は通信で私のことを空飛ぶ仮面だとか言っていた。
彼の声には明らかに驚きがあった。

その時、私が抱いていた違和感の正体、居心地の悪さの理由が分かったのだ。

…自分の姿が変だと思われる世界には居たくない。

「ねぇ、メタナイト」

長い間のあと、ふいにカービィがこちらを向く。

「ぼくはいろんなファイターと話をしてきたけど
誰もきみのことを、1頭身なのに『かわいい』とも違う、
変なひとだなんて言ってなかったよ」

それは言ってないだけだ、と言おうとしたが
彼の真剣な眼差しを見て、私は口を閉じた。

「それにファイターのみんなは、それぞれ少なからず同じ疑問を持ってた。
自分は他のみんなと違うんじゃないかって。
例えばフォックスだって、自分たちの世界にいる人たちの顔が
ある世界では“動物”の顔だって言われてることを知ってショックを受けてたんだ。

でも、違うことは変なことじゃない。

1頭身でもかっこいいのだって変なことじゃないんだ。
むしろそれがメタナイトの…えーと……『個性』なんだから!」

「……フフッ、そうか…」個性、か…

私はベンチから降りた。

「メタナイト…?」

「私はここに残る。
そこまで必死に引き留めるお前がいるのに、無理に帰ることはしないさ」

「…良かったぁ~!」

「ところで、ここに来ていたのは
私を遊びに誘うためだろう?
…話を聞いてくれたお礼だ。遊んでやってもいいぞ」

「本当?!わぁーいっ!!」

私も、これからは試合のとき以外も他のファイターと関わっていこう。
戦い方には人柄が表れる。
勝つには、強くなるにはまず相手を知らなければ。

「それで、何をして遊ぶんだ?」

かくれんぼ、悪くても鬼ごっこくらいなら付き合ってやろうと思っていた。

「公園に行って、ブランコ乗ろーっ!」

「………何っ?!!」

裏話

初めて書いた二次創作。この2人が話しているシチュエーションが個人的に好きです。のっけから好み全開だったんだなぁー。
正直、この趣味が続くとは思っていなかったので、思いついたまま書いて載せてしまったような記憶があります。
今改めて読んでみると、ずいぶんキャラクターの雰囲気が違うなぁ…。
たぶん今書いたら、メタナイトは感謝していても遊びには付き合ってやらない気がします。

スペースが余ったので、星カビ組2人の仲について空想していることを。
カービィの方は、相手を"親友"だと思っています。基本的に出会ったひとを友達にしてしまう性格で、特にキャンディ(食べ物)くれたりする相手ですし…。
一方のメタナイトは、"ライバル"だと思ってます。自分に勝ちうる数少ない存在として。
力関係は対等ですが、何となくどことなくずれてるというか…。
メタナイトの方は、本当は平和とか正義とかについて真剣に議論を戦わせたいけれど、
いかんせんカービィは天真爛漫で、そのペースに巻き込まれてしまうこともしばしば…てなことを想像してます。

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