気まぐれ流れ星二次小説

難問奇問

午後2時。静まりかえった城内。
1階にはしばらく、リビングルームにおかれた振り子時計の柔らかく深い音だけが響いていたが、
ふいに、遠くからかすかに甲高い音が割り込んできた。
また一群の試合が終わり、ファイター達が城へと帰ってくるのだ。

やがて廊下に雑多な足音や楽しげな話し声が響き始め、城はいつもの賑わいを取り戻す。
それらのざわめきが、めいめい自室やトレーニングルームに向かっていった中、リビングルームに1人のファイターが入ってきた。
近未来的な服を着込んだ青いハヤブサ、ファルコ・ランバルディだ。

彼は無造作な足どりでソファに向かうと、ごろりと横になった。
仰向けになったその顔があまり満足そうではないところを見ると、先ほどの試合で負けてしまったらしい。

誰もいないリビングでため息をつくと、次の試合に向け英気を養う…という名目の昼寝をするために、ファルコは目を閉じた。

だが、そう経たないうちに彼の午睡を妨げるものが現れた。
へんてこな歌と共にぽにょぽにょした足音が近づき、リビングルームを覗き込む。

「あー! ファルコみーっけ!」

食べ物の名前を並べ立てる歌を中断して、カービィが嬉しそうな声を出す。

まだ寝ていなかったファルコだったが、わずかに眉間にしわを寄せつつ、寝たふりを決め込んだ。

『スマブラ』での共同生活で彼が苦手とするものの1つが、"子供の扱い"だった。
やるかやられるかの修羅場をくぐり抜けてきた戦闘機乗りに、保育士が務まるわけがない。
とかく、彼にとって"子供"は面倒な存在。しっかり者のネスはまだしも、このカービィは特に手に余る厄介ながきんちょだった。
何しろこちらが相手にしなくても……

「寝てるのー?」

声が近づき、ソファのそばまで接近する。
気づかれないようわずかに薄目を開けると、カービィはソファに身を乗り出し、こちらの顔の辺りを観察している。
再び目をつぶり、あくまで寝たふりを決め込むか、思い切ってどなるか、その選択肢を吟味していると、

「こちょこちょ~っ!」

腕枕をしていたファルコのがら空きだったわき目がけて、いきなりくすぐり攻撃が始まった。

「わっ! やめろ、コラッ!」

たまらず上半身を起こして腕を振るうと、カービィはぴょんと飛び退き、嬉しそうに笑う。

「やっぱり寝たふりだ! ファルコはトリなのにタヌキなんだね~!」

「誰がタヌキだ。…ったく」

他人ひとの眠りを邪魔しやがって、と内心で文句を言いつつ、相手が何かを言い出さないうちにファルコは先手を打った。

「オレは疲れてるんだ。お前と遊んでやる気はないからな。さ、分かったらあっち行きな」

そう冷たく言い、手で追い払う。
が、カービィは全く動かず、なおもこう言った。

「寝ててもできるあそびなら良いでしょ?」

「寝ててもできる? そんなのがあるのか」

疑わしかったが、ファルコは一応聞いてやった。

「しりとりとか!」

目をきらきらさせて言ったカービィに、ファルコは呆れてこうつっこむ。

「起きてなきゃなんねぇだろ。それとも寝言で続けろってのか?」

「うーん、じゃあ…"秘密基地ごっこ"!」

「秘密基地ごっこ…? 何だそれ」

「あっちにあるヒコーキとか持ってきてやるの。ぼくがぱいろっとで、ファルコが基地だよ!
これならファルコが寝ててもできるよ!」

「寝れるわけねぇだろ…!」

横になる自分の周りでカービィがおもちゃの飛行機を振り回し、跳ね回る様子を想像し、
ファルコは即座に反対する。

「第一何でオレと遊ばなきゃならないんだ。他のやつを当たれば良いだろ」

「えぇーっ、今はファルコと遊びたい気分なの」

「何だよそれ…」

そう、こういうところが厄介なのだ。
"超絶"がつくほどマイペースで、その上他人をそこに巻き込んでいく。
そこに大人の論理や説得は通用しない。

それでもここは、何としてでも睡眠時間を死守する必要がある。
ファルコはそう決意し、声を改めてこう言った。

「とにかく、オレは次の試合までに休んでおかなきゃなんねぇ。一分一秒でも惜しいんだ。
だから今は諦めろ。…お前風に言えば、今はぐっすり寝たい気分なんだ」

言うだけ言って、ファルコは再びソファに仰向けになり、目を閉じる。
これで話は終わりだ。そういう態度を見せたつもりだった。

しかし、カービィが立ち去った気配はない。

「ん~と…」

閉じたまぶたの向こうで、まだ何か考えている声がした。

「あ、じゃあなぞなぞやろう! それならすぐ終わるよ!」

もう勝手にしろ、とファルコは半ば諦めと共に思った。
それが聞こえてはいないだろうが、カービィはこう続ける。

「それじゃぁ、だい1もん!
こべやに1個、マキシムトマトが置いてあります。こべやにはドアが1つしかなくて、しかも開けるスイッチはこべやの真ん中にあります」

よくあるクイズに習ってか、急にカービィがですます口調になる。
すらすら出てくるところを見ると、あらかじめ考えてあったか、どこかで読んだかした様子だ。

「こべやはさらにヘイで囲まれていて、出入口はワドルディくんがみはっています」

何だか物々しい警備だな。トマト1個にしては。
ファルコは依然として寝たふりを続けつつも、心の中でつっこんだ。

「でも、夕方になって帰ってきたデデデがこべやを見てみると、なんと! マキシムトマトが無くなっていたんだ!」

どうやらマキシムトマトはデデデのものだったらしい。

「ヘイの門を守っていたワドルディくんに聞くと、ここから通ったひとは誰もいません、と言いました。
でも、ぼくの前を通りがかったひとなら5人います、って言ったんだ」

それで? と尋ねかけて、慌ててファルコは口を引き結ぶ。
いつの間にか、彼はカービィのクイズに聞き入っていた。

「その5人の名前は、ギムくんと、バイオスパークくんと、ボンカースくんと、プラズマウィスプくんと、バードンくんでした。
さて、ここでもんだいです。
マキシムトマトをとっちゃったのは誰でしょうか?」

おそらくここからその5人のアリバイ証明があり、誰が嘘をついていて、誰が本当のことを言っているとか、そういうことを推理させる類なのだろう。
そう考えていたファルコの予想を、しかしカービィは鮮やかに飛び越えていった。

「ちなみに犯人はぼくじゃないよ。残念だけどマキシムトマトは他のだれかさんの手に渡っちゃったんだ。
あと、ヘイはものすごく高くて、ジャンプじゃ飛び越えられないからね」

そう言って、答えを期待するように口を閉じてしまったのだ。

――えっ……それだけか?!
そっからどうやって答えを出せって言うんだ…!

愕然としつつ、ファルコの中では2つの意見が戦っていた。
寝たふりをやめてヒントをくれと言うか、睡眠時間を優先するか。
カービィの出したクイズが解けないのは何となく癪だったが、しかしここで起きてしまっては向こうの思うつぼかもしれない。

迷っているうちに、第3者の声が割り込んできた。

「あ、カービィ! ここにいたんだな?」

やんちゃで勝ち気な、これまた子供の声。トゥーンリンクだ。

「さんざん探したぞ、急にいなくなっちゃうんだからな、まったく。
あと2分で試合始まるの分かってんのか?」

そうぶつくさと並べ立てつつ、トゥーンリンクはこちらにやってくる。

「えっ、もうそんな時間?
でも、しあいがあるのは覚えてたよ。ただ、ちょっと時計見るの忘れちゃってただけだもん」

「チーム戦でそれやるの止めてくれよ。おれまで負け扱いになるだろ? さ、行くぞ、ほら」

どうやらカービィは腕を掴まれて連れて行かれたらしい。
徐々に遠ざかっていく声はこう言っていた。

「ファルコー、また後でねー! 帰ってきたらきみの答え聞くからぁ!」

声がフェードアウトすると、あとに残されたのは静かなリビングルームと、ソファに寝そべるファルコ。
うるさい子供がいなくなったが、しかしファルコの顔は険しい。

古時計がゆっくりと時を刻んでいたが、もはやそれは眠気を誘わなかった。
どころか、カービィが帰ってくるまでの時間を刻一刻と削っているように感じられる。

眠ろうと努力すればするほど、かえってカービィの出したなぞなぞが耳に蘇ってくる。
たかがなぞなぞじゃないか。あいつだって帰ってくる頃には言ったことを忘れてるに違いない。
ファルコは、そう自分に言い聞かせた。

眠れないのをソファの寝心地のせいにし、姿勢を変えて横になってみたが、事態は変わらない。
どころか、閉じたまぶたの裏で、丸っこい姿をしたプププランドの住人がマキシムトマトを囲んで踊りはじめる始末だ。

しばらく呻吟していたが、ついに彼は起き上がった。
そのまま肩を怒らせて立ち上がり、紙と鉛筆を持ってくる。

このままでは眠ることなんてできそうにない。
いっそきれいさっぱり謎を解いてしまってから、すっきりした気持ちで寝てやる。
彼は半分やけになりつつ、そう決意した。

「小部屋があって、で、塀があって…だろ?」

頬杖をつき、ぶつぶつと呟きつつ、ファルコは羽のような手で鉛筆を器用に回す。
視線の先には、自分で書いた俯瞰図があった。
といっても、二重の四角に多少の書き込みがされたものに過ぎないが。

走り書きされた"容疑者"の名前は5つ。その他登場人物であるデデデとワドルディの名もメモしてある。

「そんで、小部屋を開けるためのスイッチは部屋の中…」

内側の四角の真ん中に、くるっと小さな丸を描く。

「…部屋の中? じゃあデデデは普段どうやって開け閉めするんだ。鍵でもあるのか?」

カービィの言っていたことを思い返すが、あるとも無いとも言っていなかったように思える。
仕方なしに"鍵"とだけメモし、その隣に疑問符を付け加える。

「でもって、塀の番兵だろ?」

鉛筆の尻で、ファルコは塀の切れ目に描いた丸印をこつこつと叩く。
カービィの話しぶりからすれば、番兵は1人。
ずいぶんなザル警備だが、塀自体がジャンプでは飛び越えられないくらい高いというのだから、それでも十分だったのかもしれない。

そして番兵が言うには、たったひとつの入り口である門を通ったものはいない、という。
塀に近づいたものとなれば5人。しかし、5人のアリバイ・証言・身体特徴・動機その他は一切与えられていない。

「……かぁ~っ! 手がかりがなさ過ぎる!」

頭をかきむしり、突っ伏す。
そんな彼に、聞き慣れた声がかかった。

「どうしたんだ、ファルコ」

顔を上げると、リビングの入り口に訝しげな顔をした隊長が立っていた。

「はぁー…なるほど。カービィがクイズを出したのか」

顎に手を当て、フォックスはファルコの描いた図を興味津々といった様子で覗き込んだ。

「あいつの出したクイズなら、そんなに難しいってもんじゃないだろう?」

軽い調子で言ったフォックスに、ファルコはなぞなぞの内容を初めから話してやる。

「…てなわけでさ。
つまりは二重の密室になっているところから、誰がトマトを盗みおおせたのかって問題らしい。
だが、怪しい5人について分かってんのは名前だけ。その他ヒントらしいヒントも無い」

「なるほどな…」

ファルコの説明を聞き、ようやくフォックスも真面目に考え始めたらしい。
しばらく考え込んでいたが、こう口を開いた。

「…逆に考えると、その名前がヒントなんじゃないか?」

「名前が?」

「ああ。一見推理クイズに見えるが、こいつはもしかしたら語呂合わせなのかもしれない。
塀とか小部屋とか言うのも、犯人を引き当てるための抽象的な意味かもな」

「まぁ、確かに。あいつが考えるレベルの問題なら、推理なんてことはしなさそうだがな」

そう言いつつも、ファルコは首を傾げる。
語呂合わせさせるタイプにしては、小部屋や塀についての描写が詳しすぎるように思ったのだ。
だが、推理するにしてもすでに何遍も考えて"不可能だ"という結論に至っている。

「5人の名前は…これか。
ギム、バイオスパーク、ボンカース、プラズマウィスプ、バードン…。
バードン…バード。"鳥"か?
そうだ。鳥なら高い塀でも飛んで越えられる」

フォックスはその結論に達し、これならどうだ、と相方を見るが、
ファルコは首を縦に振らなかった。

「その後の小部屋は? どうやって語呂を合わせるんだ」

「あぁ、スイッチが中にある小部屋か…」

腕を組み、再び考え込む。

「…スイッチって言ったら電気だよな。
"プラズマ"ウィスプが怪しいか? いや、バイオ"スパーク"もいるしな…」

スイッチを押す方法について考え始めたフォックス。
ファルコは、軽くくちばしの端を歪ませて笑う。

「ほら、やっぱり推理っぽくなってくるだろ」

「そうだな…」

と、フォックスは譲歩したものの、すぐにこう付け加える。

「しかし、やっぱり誰が可能だったかっていう段になると、名前から考えるしかなさそうじゃないか? この状況だと」

「まあなぁ…」

今度はファルコが譲る番だった。

その後はしばらく2人とも名案が出ず、めいめい天井を見上げたり、図を眺めて黙っていたが、
やがてファルコがこう口を開く。

「少なくとも、一段階目の密室は破れそうだよな。
番兵をどうにかして丸めこんじまえば良いわけだし」

そう言ってファルコは、"ワドルディ"と描かれた白丸を指差す。
フォックスは身を乗り出し、なるほど、と頷いた。

「そして、塀の中に入る、と。
その段階なら5人のうち誰でもありそうだな」

「そうなんだよ。後は部屋の中にスイッチがある小部屋に入れたのは誰かってとこなんだ。
そこで絞り込めるんだろう、きっと」

「…そういえばカービィは、床の材質については言っていなかったよな?」

「ん? ああ」

「じゃあ、土である可能性も無いわけじゃない」

「掘り進んで地中から部屋に侵入したってことか?
…だが、デデデは小部屋に入るまで異変に気づいてなかったんだ。
入り口の裏手を掘ったなら別だがな」

「…あぁ、そうか」

ため息をつき、フォックスはソファに腰を下ろす。

「じゃあ…テレポーテーションでも使えるやつがいたのかな?」

「おいおい、そんなやつが…」

言いかけて、ファルコははたと気がつく。
何しろ、出題者はカービィ。彼の暮らす奇想天外な世界ならば、何がいてもおかしくはないだろう。

「だが…いるとしても、そいつは5人のうち誰なんだ?」

「それを絞り込むために、きっと5人の名前が明かされてるんだと思うが…」

そう言ったきり、フォックスは腕を組み、考え込んでしまう。
今度ばかりは、どんな語呂合わせもひらめきも出てこなかった。
ギム、バイオスパーク、ボンカース、プラズマウィスプ、バードン。
この中でテレポートの出来そうな名前は?

知る限りの言語に照らし合わせて語呂を考えるフォックスの思考を、ファルコが中断させた。

「何もテレポートに限らなくてもよ、小部屋を開ける方法はあるんじゃないのか?」

そう言って、"鍵?"と書かれたメモを指差す。

「デデデがこの小部屋にものをしまって守らせている以上、この部屋を開ける方法が何かあるはずだ。
完璧な密室にものをしまっちまったら、デデデ本人だって取り出せなくなるだろ?」

「それで鍵…というわけか!
カービィは、スイッチ以外にドアを開ける方法は無い、とは言っていなかったんだな?」

「ああ。だからそれ以外に方法があって、誰かがその方法でドアを開けたんじゃないかって。
例えば鍵なら、デデデからそれを拝借して合い鍵を作って開けりゃぁ良い」

「でも問題は…」

「そうだな、"誰が"それをやったかってことだ。やっぱり」

またその地点に戻ってきてしまい、2人は嘆息してソファに背を預けた。
何にせよ、5人についての説明が少なすぎるのが難点だった。

小さい子供のことだから、不完全な問題を出してしまったのではないか、とも思ったが、
『DX』からの付き合いであるファルコは即座にその考えを打ち消す。
カービィはああ見えて意外に頭が冴えている。賢いとかそういうものではないが、ときたまもの凄いひらめきを見せることがあるのだ。
この問題にしても、奇想天外な論理が隠されているのかも知れない。

瞑目し、カービィの言っていたことを思い返していたファルコは、不意にがばっと起き上がる。

「…そうだ! あいつは、別に5人の中に犯人がいるとは言っていなかった!」

「他の2人も怪しいってことか?」

「あぁ。ワドルディとデデデも含め、この7人のうち最も見咎められることなく小部屋に近づけるのは誰だ?
一番怪しいのはデデデだ。小部屋の開け方も知ってるだろうしな。
番兵だって、王様が塀の中をあらためたいってんなら、何の疑いもなく通すだろ?」

そう言って、ファルコは得意げににやりと笑った。

「それじゃぁ犯人は…!」

と、フォックスが言いかけたところで、リビングルームに呑気な声が響いた。

「わしがどうかしたのか?」

2人は思わず肩をすくませ、入り口の方を見やる。
そこにいたのは、まさに、デデデ大王その人であった。

ただ、会話の詳しいところは聞こえていなかったらしく、
部下のワドルディ数人を従えてリビングルームに入ってくる様子は、いつもの鷹揚な王の態度のままである。

「いやぁ、さっきカービィがオレになぞなぞを出してさ…2人で考えていたんだ」

架空の話とはいえ、さすがに結論まで言うことはできず、ファルコはそう切り出した。

「なに、カービィがなぞなぞを? 大の大人2人がかかっても解けんなぞなぞなのか、それは」

デデデは意外そうに目を丸くした。
ただ、ファルコ達が解けなかったことに驚いているわけではなく、カービィがそれほどまでに難しい謎を出したことに驚いているらしい。
はたして、彼は2人の向かいのソファに腰を落ち着けると、こう言った。

「どれ、どんななぞなぞなんだ。わしにも聞かせてみろ」

ファルコは何とはなしにフォックスと顔を見合わせ、再びなぞなぞの内容を説明する。

「…まず、マキシムトマト1個が保管された小部屋があってな。
で、その小部屋のドアは部屋の真ん中にあるスイッチで開くようになってる。
小部屋はさらに、ジャンプぐらいじゃ越えられない塀に囲まれていて、唯一の入り口はワドルディが守っている。
だが、デデデが帰ってみると、小部屋のマキシムトマトは無くなっていた」

そこでデデデが口を挟む。

「そんなことあったか? 第一、わしはもっといっぱいマキシムトマトを持っとる」

すぐに、横のワドルディが小声で注進した。

「大王様、これはなぞなぞです。本当にあったことを言っているわけじゃありません」

「む、そうだったな」

心配していたことではあったが、この調子ではデデデにも謎を解くことなんてできなさそうだ。
ファルコは内心で思いつつ、説明を続ける。

「で、ワドルディに聞いてみると、門を通ったやつはいないが、自分の前を通ったやつは5人いる、と。
その名前はギム、バイオスパーク、ボンカース、プラズマウィスプ、バードンって具合でさ。
なぞなぞはここまでだ。あと、犯人はカービィじゃないって言ってたな」

「むぅ。なるほど…」

デデデは、大王の威厳を表したつもりらしいしかめ面をして、考え込み始めた。

さて、どうなるか。
ファルコとフォックスは、そこはかとない期待を抱いて返事を待つ。
解けない、と言うか、自分が犯人だ、と言うか。

しかし、やがて…いや、割合すぐに返ってきた返事は、2人の予想だにしないものだった。

「簡単だな。とったのはプラズマウィスプだ」

「…は?」

あんぐりと口を開けたまま固まってしまったファルコに代わり、フォックスが尋ねる。

「……どうやってその答えに行き着いたんだ?」

「知りたいか? では教えてやろう」

どこか得意げに笑いつつ、デデデは鷹揚に頷く。

「まず、塀を越えられるのは、バイオスパークとバードンとプラズマウィスプ。
あとの2人はジャンプしかできぬから、越えられたはずはないだろう。
バードンとプラズマウィスプは空を飛ぶことが出来るし、バイオスパークは"さんかくとび"で壁を登れる。
次に、スイッチのある小部屋だが、この仕掛けを解くことができたのは残る3人のうち、プラズマウィスプだけだ。
ほら、あの…何と言ったか? 電気を溜めて…」

「"プラズマはどうほう"です」

横からワドルディが小声で教える。

「あぁ、そうだ。"プラズマはどうほう"ならば壁をすり抜け、スイッチを押すことが出来る。
他の2人には、そういう技は無いからな。
つまり、そういうわけだ」

デデデはそう言って、証明終わりとばかりに満足げに口を閉じた。
ファルコとフォックスは、何も言うことができず、ぽかんと口を開けるばかりだった。
まるで未知の言葉で説明されているようだった。どこに納得して良いのか、全く理解することが出来ない。

「なんだ、存外簡単ななぞなぞだったな。
カービィにはわしが解いたと言っておくのだぞ」

わははは、と豪快に笑いながらデデデはリビングルームを去ってしまい、後には呆気にとられたスターフォックス隊員2人が残された。

やがて、フォックスが元気のない笑いをもらし、こう言う。

「なるほど、つまりプププランドにとっては常識問題だったってわけか…」

ファルコの方はしばらく頭を抱え、彼が苦労して描いた図を睨んでいたが、
ついに、天井に向かって叫んだ。

「くそーっ! オレの睡眠時間返せーッ!!」

裏話

カービィは本当に遊びたい盛りの年齢なような気がします。少なくとも精神年齢的に。
もちろん、ちゃんとすべき時にはしっかりするでしょうけどね。
でも、ここの『スマブラ』では滅多に大きな事件が起こらないので、
ほとんどのファイターからはただの"大食いの幼稚園児"くらいの目で見られている…

ちなみに、話を思いついた当初はファルコではなく、ウルフになぞなぞが出される予定でした。
子供に慣れてないファイターが対応に苦労する様子を書きたかったのですが、
それよりもなぞなぞに悩む様子をメインにしたくなったので、ファルコに。
フォックスとああでもないこうでもないって言い合うシーンが欲しくなったのです。

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